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2021年9月15日水曜日

経営法務 ~会社法・金融商品取引法上の開示制度~

上場企業の開示情報

上場企業の開示情報には、法定開示、適時開示および任意開示の3種類ある。
法定開示

法定開示には、「金融商品取引法」と「会社法」に基づく開示制度がある。金融商品取引法では、企業の事業内容や財務状況を記載した有価証券届出書・有価証券報告書等を内閣総理大臣に提出することが求められ、その提出された書類は、公衆の縦覧に提供されることになっている。会社法では、株主や債権者を対象にした計算書類の備置・決算公告といった制度が規定されている。具体的には有価証券報告書、四半期報告書、事業報告における内部統制システムに関する取締役会決議の概要、などが対象となる。
適時開示

適時開示とは、「金融商品取引所規則」に定められているもの。具体的には、自己株式の取得などの決定事実、決算短信などの決算情報、業績予想・ 配当予想の修正、業務上の提携又は業務上の提携の解消、有価証券報告書及び四半期報告書の提出遅延、などが対象となる。
任意開示

任意開示とは、法律・規則等で開示を求められてはいないが、企業がIR等を目的として自らの判断で開示を行うものである。具体的には、不祥事が発生した後の情報の開示、会社業務における法令違反事実等の不祥事の発覚、中期経営計画などがあげられる
有価証券の開示制度

会社がその株式を取引所に上場すると、投資者を保護するため金融商品取引法に定められた種々の開示の義務が発生する。会社は、公益又は投資者保護のため開示が必要な事象が発生した場合には、その内容を記載した臨時報告書を、遅滞なく、内閣総理大臣に提出しなければならないと義務化している(金融商品取引法第24条の5第4項)。会社は、事業年度ごとに有価証券報告書を当該事業年度経過後3か月以内に提出しなければならない。会社は、事業年度の期間を3か月ごとに区分した期間ごとに四半期報告書をその当該期間経過後45日以内の政令で定める期間内に、内閣総理大臣に提出しなければならないとして、義務化している(金融商品取引法24条の4の7)。有価証券報告書、四半期報告書、臨時報告書の開示手続きは、金融商品取引法第27条の30の2に定義されているEDINET(開示用電子情報処理組織)を使用することが義務付けられている。
有価証券報告書に虚偽記載をした場合の罰則

当局に提出して開示した有価証券報告書の重要な事項について虚偽記載があったり記載が欠けたりした場合、有価証券の発行者である会社が課徴金を国庫に納めなければならない。課徴金の金額については、その発行会社が発行する有価証券の市場価額の総額に10万分の6を乗じて算出した額が600万円を超えなければ600万円、超えればその算出額となる。また、重要な事項について虚偽記載等のある有価証券報告書の提出会社は、流通市場における有価証券の取得者・ 処分者に対して、金融商品取引法に基づく損害賠償責任を負う可能性がある。この流通市場における提出会社の損害賠償責任については、発行市場における発行会社の損害賠償責任と異なり、立証責任の転換された過失責任であるとされている。
内部統制報告書

金融商品取引法では、企業内容の開示が適切に行われることを確保するため、平成20年4月1日以降開始する事業年度から、内部統制報告制度および確認書制度を導入した。内部統制報告書とは、会社の属する企業集団及び会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制について評価した報告書である。上場会社は、財務局に対し、「内部統制報告書」を提出する必要がある。内部統制報告書に対しては、上場会社と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない(旧金商法193条の2第2項)。しかし、このような内部統制報告書に関する負担が、新規上場を躊躇させる要因の一つと指摘されていた。他方、新規上場企業は上場前に証券取引所による厳格な上場審査を受けており、監査証明は必ずしも必要とはいえない。そこで、新規上場企業の負担を軽減するために、上場後3年の間に内部統制報告書を提出する場合には、内部統制報告書の監査証明を受けることを要しないと平成 26 年に金融商品取引法が改正された(改正金商法 193 条の2第2項4号)。ただし、この監査証明免除は、資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準に達しない上場会社に限るとされている(改正金商法193条の2第2項4号括弧書)。ただし社会・経済的影響力の大きな新規上場企業(資本金が100億円以上又は負債総額が1,000億円以上を想定)は免除の対象外。
内部統制の4つの目的

①業務の有効性及び効率性・・・企業価値の増大という観点から、収益性を高め、無駄な投資を排除し、業務の有効性・効率性を高めること。
②財務報告の信頼性・・・財務諸表・財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保すること。
③事業活動に関わる法令等の遵守・・・事業活動に関わる安全基準の遵守や、法令等の遵守を促進すること。
④資産の保全・・・資産の取得・使用・処分が正当な手続・承認のもとで行われるように、資産の保全を図ること。
内部統制の6つの基本的要素

①統制環境・・・統制環境は、倫理観、経営者の意向、経営方針などの組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の本的要素の基礎・基盤となるものである。
②リスクの対応と評価・・・リスクの評価と対応とは、組織目標の達成を阻害する要因を「リスク」として識別し、分析・評価するとともに、そのリスクへの適切な対応を行う一連のプロセスをいう。
③統制活動・・・統制活動とは、経営者や部門責任者などの命令・指示が適切に実行されることを確保するために定める方針・手続をいう。
④情報と伝達・・・情報と伝達とは、必要な情報が識別・把握・処理され、組織内外や関係者相互間に正しく伝えられることを確保することをいう。
⑤監視活動(モニタリング)・・・監視活動(モニタリング)とは、内部統制が有効・効率的に機能しているかを継続的に評価するプロセスをいう。
⑥ITへの対応・・・IT への利用とは、あらかじめ適切に定められた方針・手続を踏まえ、業務の実施において、組織目標の達成のため、組織内外の IT に対し適切な対応をすることをいう。
確認書

確認書とは、有価証券報告書や半期報告書、四半期報告書の記載内容が、金融商品取引法令に基づき適正であることを確認した旨を記した書面であり、当該有価証券報告書等と併せて提出することを義務づけることによって、その記載内容の適正性をより高めることを目的として導入された。
内部統制報告制度

内部統制報告書で評価結果を表明する場合には、内部統制が有効であるか、または重要な欠陥があり有効でないかを記載しなければならない。内部統制報告書には、公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない。内部統制報告書は事業年度ごとに提出する(金融商品取引法24条の4の4第1項)。有価証券報告書を提出する会社であっても、有価証券を上場または店頭登録していない会社は内部統制報告書の提出は義務付けられていない。

2021年9月14日火曜日

中小企業経営・政策 〜2021年版中小企業白書 2-1〜

第2部第1章 中小企業の財務基盤と感染症の影響を踏まえた経営戦略

近年、平均的な中小企業の財務の安全性・収益性は大きく上昇してきた一方、売上高の減少への耐性については、大企業に比べて低い。中小企業の財務基盤・収益構造は業種によっても異なり、財務面に対する意識との間
にも関係性があることから、まずは中小企業自身が財務・収益の状況について把握することが重要となる。感染症対策として大規模な資金繰り支援策が講じられ、金融機関も積極的に融資を実行した結果、中小企業の資金繰り環境は大きくは悪化していない。財務基盤の弱い企業を中心に支援機関活用のニーズがあること、金融機関に対して期待が高まっている支援分野があることなど、今後支援機関も巻き込みながら経営戦略を策定していくことが重要となる。今を好機と捉え、感染症以外の事業環境の変化にも目を向けながら、事業を見直していくことが、企業の再びの安定と成長につながるといえる。
第1節 中小企業の財務基盤・収益構造と財務分析の重要性

規模や業種だけでなく、中小企業自身の財務に対する意識と財務の安全性・収益性との間には密接な関係がある。過去業績が悪化した際の反省から財務について学び、財務の安全性や収益性を改善した企業は、売上高の減少への耐性が高く、現在は感染症流行下でも安定的に事業を継続できている。これまで財務面への意識が低かった企業では、自社の財務状態について定量的に把握することが重要といえる。
自己資本比率と借入金依存度

中規模企業の自己資本比率は、1998年度を底に上昇傾向にあり、2019年度時点では42.8%と、大企業の44.8%ほぼ同水準となっている。一方、小規模企業の自己資本比率は、2010年代に入ってから上昇傾向にあるものの2019年度時点で17.1%と依然として低い。これに相対する形で、中規模企業では借入金依存度が低下傾向にあり2019年度時点では34.0%と、大企業の30.8%とほぼ同水準となっている。小規模企業の借入金依存度については、比較的高い水準で推移しており、2019年度時点で60.1%となっている。中規模企業では、過去20年にわたり、借入金への依存度を下げて、財務面の安全性の改善を遂げてきたことが分かる。中規模企業では2000年代から、小規模企業では2010年代から経常利益が増加し、売上高が横ばい基調の中で売上高経常利益率が改善しており、中小企業が収益力を高めてきた。2000年代以降の中規模企業及び2010年代以降の小規模企業における自己資本比率の上昇は、これら利益の蓄積との関係性が高いと言える。中規模企業について、業種別に財務の安全性を表す自己資本比率及び借入金依存度(2019年度時点)の平均値のうち、自己資本比率は宿泊業、飲食サービス業では低く、製造業や情報通信業では高くなっている。
売上高経常利益率

業種別に収益性を表す売上高経常利益率(2019年度時点)の平均値について見ると、宿泊業、飲食サービス業では低く、建設業や情報通信業では高くなっている。宿泊業や生活関連サービス業、飲食サービス業では赤字企業の割合が多い一方、卸売業や小売業では5%以上の高い利益率を確保できている企業の割合が低くなっているなど業種の特性に応じた分布の違いが見られる。
コストの構造

大企業の損益分岐点比率は2019年度時点で60.0%にまで改善している一方、中規模企業では85.1%、小規模企業では92.7%と、改善はしているものの大企業との格差が大きくなっている。売上高が大きく減少するような局面での耐性は、大企業に比べて低い。業種別に損益分岐点比率(2019年度時点)の平均値について見ると、宿泊業や飲食サービス業では高く、卸売業や建設業では低い。すなわち、宿泊業や飲食サービス業は売上高の減少への耐性が低く、卸売業や建設業は高い。
企業の資産構成

大企業では2000年代に、海外投資やM&Aなどにより事業を拡大したことで、投資有価証券の割合を増加させつつも、内部留保も堅調に積み上げており、借入金依存度は横ばいで推移している。中規模企業では、大企業と同様に投資有価証券の割合の上昇が見られるも、2000年代以降借入金の削減に徹しており、かつ現預金の割合も緩やかに高まるなど、大企業ほどは資金調達を通じた事業拡大に取り組んでいない傾向にある。小規模企業では、2000年代までは低い収益性が課題となり、高い借入金依存度が続いていたが、2010年代に入ると、中規模企業と同様に収益力が改善し、借入れを削減する傾向にシフトしつつある。
第2節 新型コロナウイルス感染症が与えた影響と資金調達の動向

感染症が売上高や資金繰り面に与えた影響と、中小企業の資金調達の動向や支援策の活用状況及び関心の集まった資金調達手段の概要について
2020年の売上高

2019年の売上高を「100」とした場合の水準で、2020年の年間の売上高を業種別に比較すると、100未満の割合は宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業で高く、建設業では低いことが分かる。特に2020年4月から5月の緊急事態宣言の発令期間が他県と比べて長かった9都道府県(以下、「感染拡大9都道府県」という。)に所在する企業と、その他の地域に所在する企業のうち、飲食サービス業では、感染拡大9都道府県における75未満の割合が、その他の地域と比べて特に高い。
感染症流行の影響を踏まえた資金繰り支援

持続化給付金は、2020年5月1日に申請受付を開始し、2021年2月末時点で、約423万件、約5.5兆円の給付を行った。家賃支援給付金は、2020年7月14日に申請受付を開始し、2021年2月末時点で、約101万件、約8,800億円の給付を行った。雇用調整助成金は、2020年1月24日以降の期間、感染症の影響を受けて事業の縮小した事業者に対して累次の特例措置を講じ、2021年2月末までに約267万件、約2.9兆円の支給を行った。持化給付金は従業員規模の小さい企業、雇用調整助成金は従業員規模の大きい企業で活用した割合が高い。
持続化給付金

給付対象者は資本金10億円以上の企業を除く中小法人等(医療法人、農業法人、NPO法人など、会社以外の法人を含む)、フリーランスを含む個人事業者等。2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業継続する意思があること。2020年1月以降、感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月があること。給付額は【中小法人等】200万円(上限)、【個人事業者等】100万円(上限)。
家賃支援給付金

給付対象者は 資本金10億円以上の企業を除く中小法人等(医療法人、農業法人、NPO法人など、会社以外の法人を含む)。フリーランスを含む個人事業者等。2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業継続する意思があること。2020年5月から12月までの間で、感染症の影響などにより、①いずれか1か月の売上が前年の同じ月と比較して50%以上減っていること。又は②連続する3か月の売上の合計が前年の同じ期間の合計と比較して30%以上減っていること。 他人の土地・建物を自らの事業のために直接占有し、使用・収益をしていることの対価として、賃料の支払いをおこなっていること。給付額は【中小法人等】最大600万円、【個人事業者等】最大300万円。
貸出態度判断DI

金融機関の貸出態度を示す貸出態度判断DIでは、大企業では小幅な下落にとどまり、中小企業では横ばいを維持
し、DIの水準が大企業と逆転している。過去のショックと比較して、貸出態度の消極化がほとんど見られなかったことが、資金繰り判断DIの低下を小幅にとどめたものと推察される。。中小企業向けの貸出残高は2014年以降増加傾向にあったが、感染症流行の影響を踏まえて更に大幅に増加、金融機関が積極的な融資姿勢を崩していないことなどが推察される。10-12月期は大企業、中小企業ともに横ばいで推移している。
資金調達

新たな借入れを行った企業における、調達した資金の使い道について。業種を問わず、「手元現預金の積み増し」
を回答した企業の割合が高いことが分かる。業種別に見ると、宿泊業では、「赤字補てんや当面の資金繰り」と回答した企業の割合が他の業種に比べて高く、「手元現預金の積み増し」、「デジタル化」、「新製品・サービスの開発や新規事業の立ち上げ」と回答した企業の割合が低い。また、飲食サービス業では、「感染症対策」「新製品・サービスの開発や新規事業の立ち上げ」と回答した企業の割合が比較的高く、感染症を契機とした取組に特に資金調達を必要としている可能性が考えられる。安定的な事業継続のために必要だと考える現預金水準が月商の何か月程度と考えているかについて3か月以上と回答する企業の割合が増加。不確実性に備えるため、手元現預金の積み増しが必要と考えている企業が増加したものと推察される。手元現預金の推移について企業規模別に見ると2020年は実際に、感染症流行を契機に中小企業が手元現預金を増加させている。
設備投資に対する意識の変化

企業規模別に設備投資のスタンスの変化について見ると中小企業では、感染症流行前の2019年から「維持更新」が低下、「情報化への対応」や「新事業への進出」が上昇していたが、感染症流行後の2020年にその傾向が加速している。感染症が設備投資の実施判断に影響を与えたか別に、2020年の投資計画における設備投資の目的を見ると、影響のあった企業の方が、「合理化・省力化」、「情報化関連」、「新規事業の進出」、「倉庫等物流関
係」、「新製品の生産」の回答割合が高く、「設備の代替」、「維持・補修」の回答割合が低い。
関心の高まる多様な資金調達手段

①コミットメントライン(銀行融資枠)・・・銀行と企業があらかじめ設定した期間及び融資枠の範囲内で、企業の請求に基づき、銀行が融資を実行することを約束(コミット)する契約のこと。
②資本性劣後ローン・・・企業が資金を調達する方法は、金融機関や投資家からお金を借り入れる「デット・ファイナンス」と、株式を発行することで資金調達を行う「エクイティ・ファイナンス」の主に2通りがあるが、その中間形態(「メザニン・ファイナンス」)も存在し、資本性劣後ローンはその中の一つ。
③エクイティ・ファイナンス・・・株式発行による資金調達
④クラウドファンディング・・・オルタナティブ・ファイナンスのうち、インターネットを通じて不特定多数の個人から資金を集める方法を指す。投資家が受け取るリターンにより、寄付型、購入型、融資型、株式型に分けられる。
⑤トランザクションレンディング・・・統一的な用語の定義はないが、ECにおける販売実績や消費者のレビュー、会計ソフトの入力情報、金融機関の預金口座情報、クレジットカードや電子マネーの決済情報など、様々なデータをAIなどコンピュータープログラムを使って分析し、融資の可否を決める手法による資金調達のことを指す。
クラウドファンディング

今後の活用意向がある企業に対し、活用したい理由を聞くと「アイデア勝負で資金調達できる」と回答した企業の割合が高いことが分かる。クラウドファンディングを活用した資金調達の目的について感染症流行下では既存顧客から寄付を募る企業も見られたが、「新規顧客獲得・販路開拓」を回答した企業の割合が最も高く、次いで「試作品開発」などが続く結果となっている。クラウドファンディングは資金調達だけでなく新しい製品・サービスのテストマーケティングの手段として活用することもできる。感染症流行下で新たな製品・サービスの提供を検討している企業では、こうした資金調達手段を有効活用することも検討に値するといえよう。
第3節 危機を乗り越えていくために必要な中小企業の取組

感染症の影響を小さく抑えられた企業や、感染症流行下でも回復を遂げている企業の特徴を分析し、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナを見据えた経営戦略策定の重要性について
過去の経営危機を乗り越えるための取組

経営危機を乗り越える上で最も重要だった取組について見たものである。危機前の取組としては、「新事業分野への進出、事業の多角化」と回答した企業の割合が最も高いことが分かる。また、危機下の取組を見ると、「資金繰りの改善」と回答した企業の割合が最も高いことが分かる。経営危機を乗り越えるために
行った取組(雇用・人材以外)について見ると、調査時点の総資本利益率が2%以上の企業を経営パフォーマンスの高い企業と位置づけ、その2%以上の企業では、「新規顧客開拓」、「生産効率改善」、「高付加価値製品・サービスの拡充」と回答した企業の割合が高く、2%未満の企業と比べても高い。経営危機を乗り越えるために
行った取組(雇用・人材)について見ると、2%以上の企業、2%未満の企業いずれでも「減給」、「賞与のカット」、「役員報酬カット」と回答した企業の割合が高いことが分かる。一方で、2%以上の企業では、2%未満の企業に比べて、「社内人材の教育・訓練」と回答した企業の割合が比較的高い。危機を乗り越えて再び成長軌道に戻っていくためには、「高付加価値製品・サービスの拡充」「新規顧客開拓」「生産効率の改善」「社内人材の教育・訓練」といった、新たな経営戦略の策定や業務改革も並行して進めていく必要がある。
経営計画の運用と感染症の影響の関係性

経営計画を見直して役に立った経験について、従業員規模別に見ると、従業員数が多い企業ほど「事業のリスクを回避できた」「自社の課題が整理された」の回答割合が高いことが分かる。また、従業員数が小さい企業ほど「円滑に資金調達ができた」「従業員の雇用を守ることができた」の回答割合が大きいことが分かる。一般的に、企業にとって経営計画を明文化する必要性が生じるかどうかは、従業員や株主、金融機関などのステークホルダーとの関係性にもよるが、経営計画を策定した場合には、それが足元の状況に即したものになっているか、点検していく(PDCAサイクルを回していく)ことが重要である。こうした取組ができている企業では感染症流行下のような大きな事業環境変化にも強い可能性があることが推察される。
売上高回復企業の特徴

売上高が感染症流行前の水準に戻ると予想する時期について、業種別に比較したものを見ると宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業では回復に長期を要すると考えていることが分かる。また、飲食サービス業、生活関連サービス業では「戻ることはない」の回答割合が2割近くとなっている。また、顧客属性別に比較したものを見るとBtoCの方が、感染症流行前の水準に戻るまで長期を要すると考えていることが分かる。世界18か国の1万
5千人の個人に行ったアンケート結果では、感染症の収束後も利用を継続したいサービスについて、ネットショッピング(49%)、家での運動(43%)、 モバイル決済(41%)、 ビデオ通話(35%)、在宅勤務(27%)、ビデオ会議(27%)、食品宅配サービス(22%)が挙げられており、感染症の収束後も感染症を契機に拡大した需要が今後残っていく可能性もある。今後、売上高が戻らない前提で、感染症流行下で拡大した需要を捉えながら、収益構造や事業内容を見直していく必要性に迫られる企業が相応に出てくるものと考えられる。
経営計画の見直しと売上高回復の関係性

感染症流行前時点で、経営計画に対する定期的な評価・見直しを十分に実施してきたか見ると、十分に見直している企業ほど、売上高回復企業の割合が高い。感染症流行後の見直し状況別に、売上高回復企業の割合を見ると、売上高回復企業の割合は、「見直した上で計画を実行している」と回答した企業で最も高いことが分かる。また、感染症の影響が大きかった企業の中で比較しても、同様に「見直した上で計画を実行している」と回答した企業が最も高いことが分かる。感染症の影響が持続する中で、計画の見直しに一早く取り掛かったかと、売上高が回復しているかの間には、関係があることが推察される。感染症流行による事業環境変化の捉え方を見ると、感染症の流行を事業の脅威(ピンチ)だと感じている企業ほど売上高回復企業の割合が低く、機会(チャンス)だと感じている企業ほど高い。
従業員の能力開発、トライアンドエラーの環境

事業環境の変化への柔軟な対応は、経営者だけでなく従業員を含めて企業全体が取り組んでいく必要がある。感染症流行後に従業員の能力開発・ノウハウ取得のための研修の実施状況別に、事業環境の変化に柔軟に対応でき
ていると感じているかを見ると、積極的に実施しているほど、「十分できている」、「ある程度できている」と回答した企業の割合が高いことが分かる。試行錯誤(トライアンドエラー)を許容する組織風土があるか別に、売上高回復企業の割合を見ると、当てはまる企業ほど、売上高回復企業の割合が高いことが分かる。事業環境が変化する中でも失敗を恐れず新たな取組に挑戦し続けることが重要である。
財務・経営に関する社外への相談状況

財務分析の必要性を感じているが実施していない企業における今後の支援ニーズについて、財務の安全性別に見ると、安全性が低いほど、「必要性を感じているが、方法が分からず金融機関等の助言を得たい」と回答した企業の割合が高い。経営計画の共有先について、財務の安全性が低い企業ほど「税理士・コンサルタント等」「金融機関(メインバンク)」と回答した企業の割合が高く、安全性が高い企業ほど「従業員」「株主」の割合が高い。
第4節 中小企業を取り巻く事業環境の変化への対応

環境・エネルギー、SDGs/ESG

感染症流行前の2019年に、中小企業に対して新たに進出を検討している成長分野を聞いたものでは「環境・エネルギー」と回答した企業の割合が最も高い。特に環境・エネルギーへの関心が高い背景として、SDGsやESG(以下「SDGs/ESG」という。)への注目度が高まっていることが考えられる。近年増加しているのがESG投資であり、ESG投資とは、財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する取組も考慮した投資のこと。
中小企業がSDGsの活用によって期待できるポイント

2020年3月に環境省が公表した「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド(第2版)」では、中小企業がSDGsの活用によって期待できる四つのポイントを紹介している。一つ目が、企業イメージの向上である。SDGsへの取組をアピールすることで、多くの人に「この会社は信用できる」、「この会社で働いてみたい」という印象を与え、より多様性に富んだ人材確保にもつながるなど、企業にとってプラスの効果をもたらすことができる。二つ目が、社会の課題への対応である。SDGsには持続可能な未来の実現のための様々な目標が網羅されており、これらの目標実現のための課題への対応は、経営リスクの回避とともに、社会への貢献や地域での信頼獲得にもつながる。三つ目が、生存戦略になる点である。今後はSDGsへの対応がビジネスにおける取引条件になる可能性もあり、持続可能な経営を行う戦略として活用できる。例えば、サプライチェーンを支える中小企業では、今後大企業でSDGsへの意識が高まれば、SDGsを意識した取引を要請されるようになる可能性もある。四つ目が、新たな事業機会の創出である。取組をきっかけに、地域との連携、新しい取引先や事業パートナーの獲得、新たな事業の創出など、今までになかったイノベーションやパートナーシップを生むことにつながる可能性がある。消費者向けに製品・サービスを提供する事業者では、SDGs を取り込んで製品・サービスの差別化にいかすことも選択肢といえる。
グローバル化

日本貿易振興機構が実施した「2020年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」を基に、海外ビジネスを実施する企業における感染症流行の影響と、今後の意向について、確認すると感染症の2020年度の売上高
への影響として海外向けにビジネスを行う企業の約6割が、マイナスの影響があったと回答している。そのマイナスの影響の程度を見ると、中小企業の海外売上高の減少幅の平均は41.0%と、国内売上高に比べて大きく、また大企業と比較しても大きい。
海外ビジネスの見直し

海外ビジネスの見直し方針について企業規模別に見ると、中小企業では「販売戦略の見直し」を回答した企業の割合が高いことが分かる。販売戦略の見直しと生産の見直しについて、細かく見ると販売戦略の見直しでは「海外販売先(ターゲット)の見直し」、「バーチャル展示・商談会等活用の推進」、「越境EC販売開始・拡大」を回答した企業の割合が高い。生産の見直しでは「生産数量・配分や生産品目の見直し」と回答した企業の割合が高いことや、「新規投資/設備投資の増強」と回答した企業の割合は「新規投資/設備投資の中止・延期」を上回っている。
越境EC

販売でECを利用している企業の内、越境ECを利用している企業の割合を見ると、越境 EC を利用している割合は
2016年以降増加している。また2020年について、企業規模別に見ると、中小企業の方が越境ECを利用している割合が高いことが分かる。米国及び中国の消費者による日本の事業者からのEC購入額の推移を見ると、特に中国を中心に、越境ECの市場規模が拡大してきている。

経営法務 ~計算書類・剰余金の配当~

剰余金の配当

取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り、取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる(会社法第 454条5項)。株式会社の純資産額が300万円を下回らない限り、株主総会の決議によっていつでも剰余金の配当をすることができる。ただし、剰余金の配当は分配可能額を超えて行うことはできないため、分配可能額があることが前提となる。分配可能額の計算にあたっては、最終事業年度の末日の剰余金の額を基本とし自己株式の価額などを控除し、その後、期末後の剰余金の分配等の額を加減していくこととされる。株主総会の決議によって、配当財産を金銭以外の財産とする現物配当をすることができる。ただし、当該株式会社の株式等を配当財産とすることはできない。(会社法454条1項1号)。事業年度の一定の日を臨時決算日と定め、臨時計算書類を作成して取締役会および株主総会で承認を受けた場合は、臨時決算日までの損益も分配可能額に含まれる。取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り、取締役会の決議によって剰余金の配当ができる。何回でも中間配当をすることはできない。
計算書類、事業報告及びそれらの附属明細書

取締役会設置会社は、計算書類、事業報告及びそれらの附属明細書(ある場合には監査報告・会計監査報告)を定時株主総会の日の2週間前の日から本店には5年間、支店にはその写しを3年間備え置かなければならない。取締役会設置会社以外の会社は、同じ書類を、定時株主総会の日の1週間前の日から、本店・支店に上記と同じ期間、備え置かなければならない。株主及び会社債権者は、会社の営業時間内はいつでも計算書類等の閲覧を求め、または会社の定めた費用を払ってその謄本・抄本の交付または電磁的に記録した情報の提供等を求めることができる。株式会社は、計算書類を作成した時から10年間、当該計算書類とその附属明細書を保存しなければならない。監査役設置会社では計算書類及び事業報告など、全ての計算書類及び事業報告(以下「決算書類」という)を監査役が監査する(会社法436条1項)。事業報告は、株式会社の状況に関する重要な事項を記載し、定時株主総会の日の2週間前の日から5年間その本店に備え置かなければならない。取締役は、計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、計算書類については承認を受けなければならないが、事業報告については内容の報告で足りる。

経営法務 ~簡易組織再編・略式組織再編~

組織再編行為は原則として当事会社双方の株主総会特別決議と債権者保護手続が必要となるが、簡易手続・略式手続の場合、株主総会決議が不要となり取締役会決議で可能となる。債権者保護手続では債権者に対して異議申立ができる旨を公告および個別に催告し、異議を申し立てた債権者には、弁済、担保提供等の措置をとる。なお、株式交換・株式移転は原則として債権者保護手続をとる必要はない。

簡易組織再編

簡易組織再編とは、会社がその規模に比べて相対的に小規模な組織再編行為(合併、会社分割、株式交換等)を行う場合に、会社法の規定により本来の手続を省略して行うこと。つまり簡易手続きは存続会社(買う側)のための制度である。具体的には、簡易合併、簡易吸収分割、簡易新設分割、簡易株式交換、簡易事業譲渡、簡易事業譲受がある。 会社が組織再編行為を行うことは会社の組織を大きく変更することであるため、原則として当事者である双方の会社で株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)と債権者保護手続が必要とされる。しかし、大きな会社が相対的にかなり小さな会社と組織再編を行う場合、大きな会社にとっては組織的に大きな影響がなくても同じような手続を必要とするのは、煩雑であり会社の組織再編にとって不便である。そこで、このような場合には、大きな会社において本来の手続を不要とするのが簡易組織再編行為である。組織再編行為のうち、新設合併(合併会社が新設)と株式移転(親会社が新設)には影響が軽微な会社が存在しないので簡易手続はない。存続会社が消滅会社の株主に交付する対価が存続会社の純資産額の1/5以下(超えない)であれば存続会社の総会決議は不要。

・存続会社は、株主総会決議を省略し、取締役会決議で可能である(会社法796条3項)
・株主に対する通知・公告は当事会社(消滅会社および存続会社)の双方とも必要となる。双方とも反対株主に対して株式買取請求権を認めなければならないことから、効力発生の20日前までに株主に対して、所定の事項を通知・公告しなければならない(会社法785条3項、797条3項)。
・債権者に対する通知・公告など、債権者保護手続は当事会社双方とも必要である。(会社法789条2項、799条2項)。
・新株予約権者に対する通知・公告は、消滅会社は必要であるが、存続会社は不要である(会社法787条3項)。消滅会社の新株予約権者には、公正な価格での買取請求権が認められている(会社法749条1項4・5号)。
略式組織再編

略式組織再編とは、会社が発行する株式の9割以上(定款で引き上げ可能)を特定の会社に保有されている子会社(「特別被支配会社」という)が、その特別支配会社(親会社)との間で組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、事業譲渡)を行う場合に、会社法の規定により本来の手続を省略して行うことをいう。つまり略式手続きは消滅会社(買われる側)のための制度である。具体的には、略式吸収合併、略式吸収分割、略式株式交換、略式事業譲渡がある。特別被支配会社では、特別支配会社(親会社)の意向で当然に株主総会特別決議で承認されることが明らかである。そのような結論が明らかな場合に、手間、時間、費用をかけてまで、株主総会の決議を必要とするのは、煩雑であり会社の組織再編にとって不便である。そこで、このような場合には、特別被支配会社に当たる子会社については、株主総会特別決議を不要とするのが略式組織再編行為である。なお、組織再編行為のうち、新設合併(合併会社を新設)と新設分割(承継会社を新設)と株式移転(親会社を新設)には、略式手続はない。 組織再編行為をしようとする株式会社相互間において、特別支配関係の対象となる会社が未だ設立されていないからである。

2021年9月13日月曜日

中小企業経営・政策 〜2021年版中小企業白書1-3〜

第1部第3章 中小企業・小規模事業者政策の方向性


中小企業の多様性を踏まえ、中小企業の役割・機能によって、四つの類型「地域資源型」「地域コミュニティ型(=生活インフラ関連型)」「グローバル型」、「サプライチェーン型」に分類し、それぞれの特徴に合わせた支援策が重要である。また、いずれの類型の企業においても必要な、企業の活動を共に支えるための共通基盤として、大企業と中小企業の共存共栄関係の構築に向けた取組や、災害などに備える事業継続力強化に向けた取組も重要である。今後、それぞれの中小企業が目指す姿を実現するために必要な支援策の検討を進めていくことが 必要であり、その際のウィズ・コロナ、そしてポスト・コロナを見据え、中小企業のIT化・デジタル化を進めていくことが不可欠である。また、いずれの姿を目指すにも、中小企業自身が経営戦略を明確にすることは重要であり、それを促す支援機関ネットワークの構築も課題である。
第1節 中小企業の類型

業種別の中小企業・小規模事業者が目指す類型

「情報通信業」や「製造業」において「グローバル型」を目指す企業の割合が高い一方、「小売業」や「生活関連サービス業,娯楽業」では「生活インフラ関連型」を目指す企業の割合が高い。このように、業種によって異なるとともに、同じ業種内においても目指す類型が異なり、業種だけでは捉えきれない多様性が存在する。
業種別・規模別の労働生産性

情報通信業や輸送用機械器具製造業は従業員規模が大きいほど労働生産性が高くなる一方、小売業や飲食サービス業は従業員規模が大きくなっても、労働生産性の上昇は小さい。中小企業庁「中小企業政策審議会制度設計ワーキンググループ」(以下、「制度設計ワーキンググループ」という。)において、類型ごとの目指す方向性と支援の在り方について検討が行われた。四つの類型の特徴を踏まえ、「地域資源型」や「地域コミュニティ型」の企業については、規模拡大による労働生産性向上ではなく、持続的成長・発展を通じた地域経済や雇用の維持、「グローバル型」、「サプライチェーン型」の企業については、中堅企業への成長を通じて海外で競争できる企業を増やすというそれぞれの観点から、それぞれ支援を進めていくことが必要であることが示された。
第2節 地域資源型・地域コミュニティ型企業の目指す方向性と支援の在り方

人口密度の低い地方ほど、商店街の衰退、働き手・働く場所の不足、地場産業の衰退などの課題に直面しており、こうした課題の解決は、地域の持続性確保の観点からも必要な取組である。小規模事業者には、こうした地域課題の解決に当たって中心的な役割を担うことが期待されている。一方、人口減少が加速し、域内需要の減少が進み、地域の中小企業・小規模事業者の事業の存立基盤が大きく揺らいでいる。今後、事業者が利益を獲得していくためには、域外への販路開拓やマークアップ率の向上につながる、「質の高い商品・サービスを相応の価格で提供すること」を目指す取組も重要である。事業者による生産性向上の取組に加え、地域の需給バランスを踏まえた持続可能な経済圏の形成や、地域資源を最大限活用した域外需要の取り込みも必要である。その際、地域の担い手を特定の上、基礎自治体などが連携して、持続可能な地域経済モデルを確立することが重要である。
第3節 グローバル型・サプライチェーン型企業の目指す方向性と支援の在り方

中小企業の事業・規模拡大促進策においては、一般的に中堅企業への規模拡大の可能性が高い企業群を重点的に支援することが効果的であると考えられる。中小企業の成長・規模拡大の手法として、M&Aも効果的であり、吸収合併を実施した企業と、実施していない企業の労働生産性の推移を比較すると、吸収合併を実施した企業の労働生産性が比較的高い水準となっている。制度設計ワーキンググループでは、中小企業のM&Aを促進するとともに、デューデリジェンスの実施を促すような支援の必要性や、所在不明株主の株式の買取り手続に必要な期間を短縮する措置を検討している。(株)日本政策金融公庫は、2021年1月から中小企業の海外子会社に直接融資を行う仕組みを構築し、中小企業の海外展開支援を強化した。今後、中小企業の進出ニーズの高いASEAN諸国を中心に、対象国の拡大を検討していく。また、(独)中小企業基盤整備機構は、ファンドへの出資を通じて、出資先の販路開拓や組織管理体制の整備を支援し、中小企業の海外展開を支援している。
第4節 共通基盤の整備

事業継続力強化の一環として自然災害や感染症などの危機に対応するために、各企業が保険加入などの事前対策を講じてリスクに備えておくことが必要である。経済産業省では、2019年7月から事業継続力強化の認定制度を開始した。 面(地域)で被災する自然災害への対応策として、サプライチェーン上の垂直的な連携や、組合などによる水平的な連携により、中堅・大企業を含めた複数事業者が連携した計画の策定も有効である。しかし、中小企業以外が連携事業継続力強化計画に参画しても、実質的な支援が受けられないことなどから、策定が進んでいない。そのため連携事業継続力強化計画を策定した中堅企業が、自然災害などにより影響を受けた場合には、一定の金融支援を受けられるような制度が検討されている。また、地方自治体などが中小企業に対して所在地域の災害リスクを周知することを促進し、中小企業が、ハザードマップを踏まえて計画を策定し、想定される災害をカバーする保険へ加入するなど、事前の備えを行うような促進策が検討されている。

経営法務 ~株式交換・株式移転・株式取得~

株式交換

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう(会社法第2条31号)。親会社となる株式会社が株式交換の主体となり、親会社が保有する株式等と傘下に納める会社の発行済株式全部を交換する。
三角合併

親会社となるべき会社は合併の主体とならない。三角合併は親会社の株式を合併の対価として子会社などを通じて交付する。
株式交換と三角合併の相違点

株主総会決議

株式交換の場合、原則として各当事会社(親会社と消滅会社)の株主総会の特別決議による株式交換契約の承認が必要(会社法第783条1項、795条1項、309条2項12号)。三角合併の場合は、通常の合併と同様に株主総会の特別決議による承認が必要であるが(同第783条1項、795条1項、804条1項、309条2項12号)、親会社は合併の主体とならないため株主総会決議による合併契約の承認は不要。
株式買取請求権

株式交換の場合、各当事会社(親会社と消滅会社)の反対株主に株式買取請求権が認められている(同第785条1項、797条1項)、親会社の子会社である株主には株式買取請求権は認められていない。三角合併の場合、各当事会社(親会社となるべき会社の子会社と消滅会社)の反対株主に株式買取請求権が認められているが、親会社の株主には株式買取請求権は認められていない。
契約の当事者

契約の当事者は株式交換の場合は親会社と消滅会社の2社。三角合併は親会社となるべき会社の子会社と消滅会社の2社が契約当事者となる。
交換の対価

株式交換の場合、交換の対価は親会社の株式のみならず、同株式に代わる金銭その他の財産(社債・新株予約権・新株予約権付社債等)とすることも可能である(同第768条1項2号)。一方で、三角合併の場合、交換の対価は完全親会社の株式に限られる。
株式移転

会社法第773条第1項第1号および第5号に定義されている株式移転設立完全親会社および株式移転完全子会社において株式移転を行う場合、当該株式会社は株式移転計画を共同して作成しなければならない(会社法第772条2項)。株式移転計画には、株式移転により設立する完全親会社の目的、商号、本店の所在地、発行可能株式総数、完全親会社の設立時取締役の氏名等を定めなければならない(同第773条1項1号、3号)。株式移転計画は完全子会社の株式総会の特別決議による承認が必要である。(同第804条1項、第309条2項12号)。また、株式移転には影響が軽微な会社が存在しないので簡易な手続は認められていない。会社法では完全親会社が完全子会社の株式の全部を取得する日を「その成立の日」と規定している (同第774条1項)。

経営法務 ~会社合併の手続き~

会社法では、「合併契約の締結」に始まり、「事後開示」で終わる一連の手続を合併の手続として法定している。改正前商法と比べ会社法では、これらの手続を並列して行うことにより、合併手続を短期間で行うことを可能としている。また、株主総会の決議を必要としない手続として簡易合併、略式合併の規定も整備されており、いずれも組織再編をスムーズにする制度である。以下、原則的な合併手続についての時系列である。

合併契約の締結

会社が吸収合併をするには、合併契約を締結しなければならない(会社法第748条)。 合併契約の締結は重要な業務執行であり、取締役会設置会社では、契約締結の前に取締役会の決議が必要としている。 合併契約においては、次の事項を定めなければならない。
◆法定事項(会社法第749条)
 ①商号、住所

 ②交付される合併対価の内容
 ③②の割当に関する事項
 ④消滅会社が新株予約権を発行している場合 → 新株予約権の承継等に関する事項
 ⑤吸収合併効力発生日
合併契約に関する書面の事前備置

消滅会社・存続会社は、合併契約備置開始日(※)から効力発生日後6ヵ月を経過するまでの間(消滅会社は効力発生日までの間)、合併契約の内容等を記載した書面等を本店に備え置かなければならない(会社法第782条1項、794条1項))。
※合併契約備置開始日は下記の日のいずれか早い日である。
①合併契約承認のための株主総会の日の2週間前の日
②株主に対する吸収合併をする旨の通知または公告のいずれか早い日
③債権者保護手続の公告または催告のいずれか早い日
吸収合併の承認決議

合併に際しては、原則として株主総会の特別決議が必要である(会社法第783条、795条)。消滅会社・存続会社は効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって、合併契約の承認を受けなければならない。なお、消滅会社・存続会社の取締役は、株主総会の2週間前(非公開会社の場合は1週間前)までに株主に対してその通知をしなければならない(会社法第299条)
反対株主の株式買取請求

消滅会社・存続会社は、株主に対して合併の効力発生日の20日前までに、①吸収合併をする旨、②相手方会社の商号、住所を通知しなければならない(会社法第785条3項、797条3項)。合併に反対の株主は、消滅会社・存続会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる(会社法第785条1項、797条1項)。
株券等の提出公告・通知

株券を発行している消滅会社は、合併の効力発生日の1ヵ月前までに、合併の効力発生日までに株券を提出しなければならない旨を公告し、かつ、株主に個別に通知しなければならない(会社法第219条1項)。
債権者への公告・催告

①債権者保護手続(会社法第789条2項、799条2項)
消滅会社・存続会社は、以下の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
 ア.吸収合併等をする旨
 イ.相手方会社の商号、住所
 ウ.消滅会社・存続会社の計算書類に関する事項
 エ.債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨(1ヵ月以上)

②債権者の異議(会社法第789条1項、799条1項)
債権者は、消滅会社・存続会社に対し、吸収合併について異議を述べることができる。 改正前商法では、合併契約の承認の決議の日から2週間以内に、公告・催告を行うことになっていたが、会社法ではこの定めが無くなったため、承認決議の前に債権者保護手続を行うことができるようになった。
登記

効力発生日から2週間以内に、本店所在地において、消滅会社は解散登記、存続会社は変更登記を行わなければならない(会社法第921条)。
◆合併の効力発生日(会社法第750条1項)
会社法:合併契約で定めた一定の日
改正前商法:登記の日
事後開示

存続会社は、効力発生日後遅滞なく、消滅会社から承継した権利義務等の事項を記載した書面等を作成し、効力発生日から6ヵ月間、本店に備え置かなければならない(会社法第801条)。

経済学・経済政策 〜独占〜

 独占市場の利潤最大化条件はMR(限界収入曲線)=MC(限界費用曲線)である。MR=MCの生産量に対応する価格を設定することで利潤が最大化する。 総収入が最大となるのはMR(限界収入曲線)=ゼロである。 独占的競争では、多数(無数)の企業が相互に差異化した財・サービスを供給する。...